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2006年12月24日(日) 11:00〜18:00 『合同リハーサル2』

講師:山下敦弘(映画監督)/信國輝彦(俳優)



最終回の特別ゲストは、『どんてん生活』(99)で学生時代より国内外から注目され、その後20代で立て続けに傑作を発表し、様々な客層から熱い支持を受ける、最注目の若手映画監督・山下敦弘。大作『リンダ リンダ リンダ』が2005年に公開されたばかりで、現在も公開待機作品を3本控えている。

山下敦弘は、映画を一目すれば瞭然だが、山本浩司、山本剛史をはじめとする学生時代からの盟友的な俳優をはじめとし、俳優の演技の凄まじいダイナミズムを諸作品の原動力の一つにしている。俳優側からも、監督側からも、相当に「秘儀が気になる」監督である。

そうした山下敦弘は演出希望脚本として皆川由起『セツナブルー』を選び、「でも脚本長いんだよね。俺なら、これは十数分の映画で濃縮できるんじゃないか、と思った。」と語る。

1シークエンスで様々な劇中のエッセンスを凝縮することは出来るよ、と山下監督は言い、ワークショップの人々に会ってから色々対応します、ほとんど具体的な内容は語らずに床に付した…。明日12/24は最終回、どんな展開になるのだろう。




山下敦弘版オーディションは、俳優一人ずつのオーディションではなく、俳優コース全員を車座にしていっぺんにまとめた「しゃべり場」。いじめられっこの女子学生、生徒会長、時代小説作家、ボクシング志望の男子学生、いじめられる側にも問題があると思っている女学生…。すべての役割を耳打ちし、ディスカッションを始めさせる。

車座になった「しゃべり場」では、それぞれがしゃべり出さないと自己表現が出来ない。

各自、自分が与えられた役割がどうであっても、それぞれの立場から発言しないと何も出来ないわけだ。

その車座をグルグルと山下監督が回り、タイミングを見計らって、コンスタントに俳優に耳打ちを行う。不意に吹き込まれる台詞、行動に俳優は即座に対応する場合もあり、うまく条件反射できない場合もある。40分ほど続いた「しゃべり場」は終了し、そのままリハーサルへと突入した。

山下敦弘オーディションは
「しゃべり場」

「しゃべり場」に
皆はどう参加するか?
山下敦弘監督(中央)




『セツナブルー』の1シークエンスを、平原夕馨(※1)さんと小谷可南子さんと吉岡研治さん、姜華栄さんと西山真来さんと安藤匡史さん、谷進一さんと沖田星子さんと原口陽路さんと3つの組み合わせに分け、それぞれ各3,4回ほど山下監督は演出した。

「俳優の演技をじっと見ながら、即興で台詞を与える」

「一回ごとで丸っきり違うキャラクターを与えてしまう」

それらの演出方法で俳優がみるみる違うものになっていくのにも驚いたが、さらに驚いたのはやはり引き出しの広さだった。同じ一つのシークエンスでありながら、3通りのまるで違うドラマに仕立て上げてしまったのだ。ミステリー、恋愛劇、

コメディ、そうしたジャンルでもくくれない要素を様々に横断させる。 脚本がここまで変えられたのを皆川さんはどう観たのだろう。

続いて最後、最初の「しゃべり場」オーディションと『セツナブルー』とを融合させた、大団円のエチュードを行う。結果的にどこに転がっていくかは分からない混沌的なものにもなったが、俳優の方々は相当楽しんだのではないだろうか。「こんなことばかりはやっていられないんだけどね、」と山下監督は終わった後に苦笑いされたが、やはり本当に人を楽しませる天才なのだと肌で感じた。


(※1)平原夕馨……モデル、女優。第1回CO2企画制作作品『赤い束縛』(唐津正樹監督)に主演し、その年の女優賞を受賞する。審査員の黒沢清監督(『アカルイミライ』『叫』)にもその演技を絶賛された。

場は一転し緊張感ある演出を受ける
小谷可南子さん

『セツナブルー』
全く違った3パターンの内容となった




監督コースからは『タカコ…大丈夫。リョウコも…大丈夫。』に改訂した藪中輝さん、

同じ脚本を演出する西野哲さんが参加する。
 

山下監督の演出を観た直後に演出するプレッシャーも多分にあっただろう、しかし「詩を朗読してもらう」という独自のオーディションを藪中さんは黙々と行う。詩の内容は母について書かれたもの、母について空想する時間をじっと女優さんにつくってもらい、それをじっと観る。先日の10/15、「これは母と娘との物語だ」と指摘したいまおかしんじ監督の言葉が、ヒントになったのだろうか。

その後藪中さんは、事務所の群像劇を、俳優コースの方全員と組んで、数回演出する。

西野哲さんは演出したい箇所が初めから決まっていたようで、それはラストの最も見せ場となるシークエンスだった。俳優がすれ違う瞬間から入念につくりこんでいき、そして演出する過程で、先程目の当たりにした山下監督の演出方法も柔軟に取り入れたりする。藪中さんは、西野さんがつくったシークエンスをどう観たのだろうか。

2007年7月9日から始まり、この12月24日まで全11回を経たワークショップはこれで終了した。
山下監督は最後、「僕は大阪藝術大学というところにいたんですが、とにかくそこはどんどん映画をつくる環境だったんです。先輩の映画を手伝ったり、仲間の映画を手伝ったりしながら、僕も撮ったり。皆さんもこれをスタートにどんどん撮って下さい。」と言われた。

このワークショップでの半年にわたる化学変化から、一本でも作品が生まれることを願ってやまない。

藪中輝さん 緊張しながらも
オーディションを実施

演出をする
西野哲さん(右)
山下監督・信國輝彦講師
半年のワークショップが終わる


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