70年代犯罪映画の軌跡05

【2010年06月05日 から 6月11日(金) まで 】

刑事映画の光と影/大人たちの肖像

スティーヴ・マックイーンの『ブリット』(68)そしてクリント・イーストウッドの『ダーティハリー』(70)、ジーン・ハックマンの『フレンチ・コネクション』の大ヒットを受けて70年代に刑事映画は進化した。もちろんカーアクションを見せ場としたものも多いが、刑事映画はかなりのバラエティをもちはじめテレビでも『刑事コロンボ』『刑事コジャック』『マックロード警部』『刑事トマ』などと広がってゆく。銃と車そして美女。これが映画を見る楽しみだった。しかしアメリカ社会はベトナム以後であり、治安の悪さと腐敗した政治と反権力そしてポルノの自由化の混乱した時代でもある。自由には責任がつきまとい、それでも自由を求めて社会からはみ出す犯罪者たち、それを追う刑事とて同じ矛盾の中で生きていた。『ハッスル』の主人公フィル・ケインズ刑事は有能だが、出世コースに乗っているわけでもなく50年代の、正義が正義であったアメリカ社会に憧れている。そしてフランス人の高級娼婦ニコルと同棲しているが、彼女に強い態度で仕事を辞めさせることが出来ない。それは彼女の自由を守るためであり、離婚して子供もいる自らの経済的な事情もある。一方ニコルは金持ちの変態の相手をしながら自分の優雅な生活を守るために仕事は続けているが、フィルを愛しており、二人でローマに旅立つ日を夢見ている。フィルが担当した事件はさらに込み入っており、それは事件そのものではなく自殺したとされる娘の両親の事情による。娘の父マーティン・ホリンジャーはかつて朝鮮戦争に行き、以後孤独に生きてきた。妻とは多少の齟齬はあるが、妻の連れ子の娘は家出して結局、風俗産業にまみれて薬物死してしまったのだ。その死が簡単に自殺にされてしまっては治まりがつかない。フィルの同僚の黒人刑事もまた複雑である。白人社会に順応し、同じ黒人にはより厳しくなってしまう。二人の刑事はともにボガードやガーフイールドなど40年代の俳優に憧れているが、彼らが追う獲物はまさに「白鯨」さながら巨大なものである。このように『ハッスル』は登場する刑事たちがどこか危うさを抱えているのだ。また『マシンガン・パニック 笑う警官』の主人公の刑事ジェイクも同じだろう。バスでの大量射殺事件の被害者に自らの相棒の若い同僚刑事を見つける。なぜ彼がこのバスに乗っていたのか を調べる中で死んだ同僚とその恋人との関係に歪んだ性癖を発見してしまう。しかし彼とて家族と上手くいっているわけではないのだ。刑事は事件を受けてその捜査をするのだが、この70年代の刑事たちは犯罪の最前線いるからこそその社会や人間関係に見える深い罠にはまっていくのだった。アクションだけではない刑事にはその社会の持つ物語と反応する顔が画面を歪めていくのだ。

リチャード・フライシャー監督の『センチュリアン』も再映!
全作品16mmプリント字幕投射付



『ハッスル』 Hustle 1975/U.S.A./115min(スタンダード版)

監督・製作ロバート・アルドリッチ
脚本スティーブン・シェイガン
撮影ジョゼフ・バイロック
音楽フランク・デ・ボール
出演バート・レイノルズ(フィル・ケインズ刑事)、カトリーヌ・ドヌーブ(ニコル)、
 ベン・ジョンソン(マーティ・ホリンジャー)、アイリーン・ブレナン(ポーラ・ホリンジャー)、
 ポール・ウィンフィールド(ベルグレーヴ刑事)、エディ・アルバート(レオ・セラーズ)、
 アーネスト・ボーグナイン(主任警部サントロ)、シャロン・ケリー(グロリア・ホリンジャー)

ロス市警のケインズは裏社会の弁護士レオと関係のある高級娼婦ニコルと同棲していたが関係に悩んでいた。
そんな時、未来を失った元軍人マーティ・ホリンジャーの娘の変死事件の担当になる。
ポルノ産業にも関わっていた娘の死を受け入れられず、自殺とされながら自ら事件に介入するマーティにはかつてのアメリカの男の姿があるが、時代遅れでもあった。
同僚の黒人刑事ベルグレイヴと捜査を勧めるうちに事件はある大物にぶつかる…。


70年代ハリウッドで最もセックスアピールのあった男優バート・レイノルズが『ロンゲストヤード』に続いて名匠ロバート・アルドリッチ監督と組みフランスの大女優ドヌーヴを招いて撮ったネオ・ノワール。
といってもスリラーやアクション、犯罪映画というよりも刑事役のレイノルズと高級娼婦役ドヌーブの恋愛ドラマとして評判になった。
ロスの有能な刑事でありながらフランスから来た高級娼婦のドヌーヴとの愛に悩み、一方で娘を失った元軍人のベン・ジョンソンとアイリーン・ブレナンの夫婦の辛い想いにも共感し法を越えてあらがう大人のドラマ。

共演にはジョン・フォード作品の顔ベン・ジョンスンが娘を殺された元軍人の孤独な父を、その妻を名傍アイリーン・ブレナンが演じる。
また黒人の犯罪者に複雑な反応を見せる同僚刑事にはポール・ウィンフィールド、そして悪徳弁護士にはエディ・アルバートが上司の刑事にはアーネスト・ボーグナインが独特の個性を見せる。
当時アメリカ・ポルノのスターだったシャロン・ケリーが殺された娘役で出演。
スタッフはまさにアルドリッチ一家の撮影バイロック、音楽デ・ボール。ドン・シーゲル&イーストウッドの『ダーティハリー』と対抗し色合いの異なった刑事ドラマとなった。

『マシンガン・パニック 笑う警官』THE LAUGHING POLICEMAN 1973/U.S.A./114min(スタンダード版)

監督・製作スチュアート・ローゼンバーグ
原作マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー
脚本トーマス・リックマン
撮影デヴィッド・M・ウォルシュ
音楽チャールズ・フォックス
出演ウォルター・マッソー(ジェイク・マーティン)、ブルース・ダーン(レオ・ラーセン)
 ルー・ゴセット(ラリモア)、アンソニー・ザーブ(ナット・スタイナー)、
  キャシー・リー・クロスビー(ケイ・バトラー)、
 ジョアンナ・キャシディ(モニカ)、
 ポール・コスロ、マット・クラーク、クリフトン・ジェームズ



スウェーデンの誇るシューヴァル&ヴァールーの「刑事マルティン・ベック」シリーズの『笑う警官』を舞台をサンフランシスコに移してスチュアート・ローゼンバーグが翻案映画化。当時『サブウェイパニック』(そのリメイクが『サブウェイ1.2.3』)『突破口』などに主演し決してセクシーではないが中年の気骨で魅せたウォルター・マッソーそして相棒には70年代の個性派ブルース・ダーン。そして黒人俳優ルー・ゴセット。バスでの大量殺人事件で前の相棒を殺された刑事が過去の未決事件に再挑戦するなかで死んだ青棒の過去も知る…

『センチュリアン』The New Centurions 1972/U.S.A./103min(スタンダード版)

監督リチャード・フライシャー
製作ロバート・チャートフ、アーウィン・ウィンクラー
原作ジョセフ・ウォンボー
脚本スターリング・シリファント
撮影ラルフ・ウールジー
音楽クインシー・ジョーンズ
出演ジョージ・C・スコット(キルビンスキー)、ステイシー・キーチ(ロイ・フェラー)、 ジェーン・アレクサンダー(ドロシー)、
スコット・ウィルソン(ガス)、エリック・エストラーダ(セルジオ)

ロイとガスそしてセルジオの3人は夢をもって警察学校を卒業し、ロス市警に配属された。 ロイの相棒はこの道23年の大ベテラン、キルビンスキーだ。仕事は理想に燃えた青年たちには厳しい地味で忍耐のいる仕事だ、夫婦喧嘩の仲裁から売春婦の相手、そしてガスはパトロール中に強盗犯と間違って店の主人を射殺し、メキシカンのセルジオはかつての仲間から裏切り者扱いされた。ロイは妻のドロシーとすれ違う日々が続き、そんな中で重傷を負った。夫は法学士であるにもかかわらず検事にならず現場に入ったことそして荒んでゆく夫を見かねた離婚だった。また頼りにしていたキルビンスキーは引退し、孤独に生活していた。警官の生活には夢も希望のないことを知ったロイは徐々にアルコール中毒に陥るそして…。

ロス警察の巡査部長だったジョセフ・ウォンボーの原作映画化。ウォンボーの原作は77年にはロバート・アルドリッチが『クワイヤ・ボーイズ』を映画化している。原題のニュー・センチュリアン=“新・百人隊"とは、ローマ時代治安をうけもった“百人隊"からとったもの。製作はニューシネマ時代から新人監督と組みスコセッシやスタローンらを見いだすウィンクラーとロチャートフのコンビ、監督には50年代から活躍するリチャード・フライシャー、脚本はスターリング・シリファント、音楽はクインシー・ジョーンズが各々担当。出演の若手警官にはステイシー・キーチ、スコット・ウィルソン、エリック・エストラーダの三人が、そして名優ジョージ・C・スコットが老警官を演じた。

スケジュール




15:00〜 17:30〜 20:00〜
6/5(土) マシンガンパニック センチュリアン ハッスル
14:00〜 16:30〜 19:00〜
6/6(日) ハッスル マシンガンパニック センチュリアン
19:30〜
6/7(月) - - ハッスル
6/8(火) - - マシンガンパニック
6/9(水) - - ハッスル
6/10(木) - - マシンガンパニック
6/11(金) - - ハッスル
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